『日本書紀』の第三十一代用明天皇の条に、「天皇信仏法尊神道」（天皇は仏法を信じ、神道を尊びたもう）とあり、これがわが国の文献上での初出だ。
　神道は日本民族の間に自然に生まれ育った、伝統的な神祇信仰（じんぎしんこう）だから、これに対する固有の呼称はなかったようだが、欽明天皇の御時に伝来した仏法に対比して、神道と表現することにより区別したのだろう。ところで、中国では『易（えききょう）経』に神道という言葉が用いられているが、こちらの方は日本と違って霊妙なる道という意味のようだ。また、「後漢書」では、墓に通ずる道の意味で使われている。神道では、神とは万物を生かす”隠れた霊性”ということだ。カミの「カ」は隠れた目に見えないということであり、「ミ」とは「霊性・身」という意味で、それが組まってカミになった。目に見えない生命力、大生命体をカミと定義したわけだ。日本の場合の神とは大自然そのものであり、人間も大自然の一部だから、人間も神になる。そして、生きとし生けるもの、地球の中にあるものはみんな本質的には同じで、役割とか働きにおいて連うととらえている。神池は海や湖をあらわし、岩山として磐境・庭園もある。日本に庭園のルーツは縄文時代の磐境であり、神社はその形態を今に伝えている。神道には宗教の定、である「教祖・教典・教義」はない。いわば宗教以前の信仰だ。あえて規定するとすれば神道は神が教祖であり、大自然が教典であり、教義はその働きを感得して一人一人が作る。したがって、一人一神道になる。神道は、仏教などと異なり、人を善に導くために教えを解くのではなく、自然や日本古来の神々を始め、大きな力を持ったものや、菅原道真や平将門のように怨念を残して死んだ者などを奉り、その力の恩恵を受けたり、祟りをおさめるための宗教だ。祭祀を重んじ、古代信仰の考えを色濃く残す宗教といえるだろう。退魔鬼行では、神道技能を修得することによって、神々の力を借りた呪術が使用できる。神道技能を修得したものは、神々の中から一神を選ぶことによって、基本的な呪術の他に、その神独自の呪術を使用できるようになる。神道では非常に多くの神々がいるが、退魔鬼行では大和王朝の樹立と共に編成された神話の神々のみを取り扱っている。
　元伊勢神宮の神社の原初の形態では、神社の本殿や御神体は大自然そのものだった。奈良県の大神（おおみわ）神社には拝殿しかなくて、本殿は三輪山だ。鎮守の森は大自然の生命が凝縮したものであり、鎮守の森に入り、良い気に接すると、心が洗われ、気持ちがリフレッシュします。
　神社は日本人のふるさとだ。それは日本文化のルーツであり、エッセンスが凝縮されている。そして、神社は天地自然と人間をつなぐメディアであり、一種にのアンテナだ。参拝した人の多くは「神社にいると清々しい気持ちになる」と思う。これは、古代の人々がその地域で最も気のよいところ、神聖な土地に神社を建て、その地に神を拝んだからだ
　神社の称号には、「神社」といわれるほかに「神宮」「宮（ぐう）」「大社（たいしゃ）」「社」などがあり、各々の神社の由緒に基づいて定められている。神宮という称号は、明治神宮や熱田神宮、平安神宮のように、皇室と深いつながりをもつ神社であるとか、天皇をおまつり神としておまつりしている神社に用いられる。ただし、単に「神宮」と称した場合は、伊勢神宮のことをさす（「伊勢神宮」は通称であり、正式な名称は「神宮」だ）。宮の称号は、八代宮や井伊谷宮のように、親王をおまつりしている神社に用いられる。なお、東照宮や天満宮、八幡宮のように慣習的に称号を用いる例もある。大社の称号は、かつて官国幣社（かんこくへいしゃ）制度があったときには、出雲大社のことをさした。しかし、戦後になってからは、春日（かすが）大社や住吉大社、高良（こうら）大社のようにこの称号を用いる神社が増えた。これらの神社は、いずれも旧社格が官幣（かんぺい）大社、国幣（こくへい）大社の神社だ。社の称号は、大きな神社からおまつり神を勧請（かんじょう）した神社に用いられ、神明社や天神社などがある。
　神社に参拝する時は、まず島居がある。烏居は、邪気が聖域に侵入するのを防ぐ結界になっている。と同時に島居はきれいなオーラが出ているので、参拝する人を清めてくれる。
　参拝の際に手を洗い、口をすすぐ手水舎は、神に会う前に自分のケガレを清める場所だ。昔は神社の近くにある川で体を洗って心身を清めてから、参拝した。これをミソギという。時々、ひしやくに直接口をつけて口をすすいでいる人を見かけるが、これはマナー違反だ。手水の作法は、次の通りだ。
　　1. 右手でひしやくで水をくんで、まず左手を洗う。
　　2. 左手にひしやくを持ち替えて右手を洗う。
　　3. 右手に持替えて左手で水をすくって、口をすすぐ。手ですくってから口に含みます。
　　4. 最後にひしやくを縦にしてクルクル回しながら、自然に水が柄を伝わって流れ、ひ　　　　しやくについた手垢を洗い清めるようにする。
　神社には絵馬があるが、これは神社に馬を奉納していた名残りだ。拝殿で祈願した後は、神からのアドバイスを受けるために「おみくじ」を引く。おみくじというのは、自分では気づかないことを、神がメッセージとして示してくださるものだ。おみくじには全般的な運勢から仕事、愛情、縁談、恋愛、旅行など様々な分野のアドバイスが、かれている。古代は農作物が今年は豊作や凶作かなど、神意をうかがうために太占（フトマニ）という神占いを行っていた。その名残りがおみくじだ。おみくじは境内の木に結ぶ。「神さまのアドバイスに留意して、おみくじを結ぶ時は、イキイキと楽しく頑張る」と思って結ぶ。お守りは「自然印神」という大生命力の形代（カタシロ）だ。神のパワーを袋に封印したのがお守りで、自分をなおし、守ってくれる。
　神社の境内には、狛犬が対になっている。狛犬は神社を守る犬だ。一方が口をあけ、もう一方が閉じている。これは、初の音「ア」と二後の音「ン」をあらわし、キリスト教の折りの言葉アーメン、ヨー力・の聖音オームに通しるものがある。日本人は昔から、動物を神の使いとして大手にしていた。出雲大社では竜蛇神のシンポルとしての海ヘビ、春日大社や厳島神社は鹿、稲荷神社は狐になっている。埼玉県の三蜂神社は狼を「大口真神」としてあがめた。動物を神の使いとみなすことによって、人間と動物の共生をはかったのだ。神の使いとなると、動物をむやみに殺せない。
　お賽銭は投げないで、そっと入れるようにする。お賽銭とは日常生活において神さまから頂いている恵み（神徳）に対して、感謝の気持ちをあらわすものだ。
　社殿には鏡がおいてある。鏡は太陽のシンポルで、形も太陽と同じ円鏡であり、神の光を映すものであるという信仰があった。神社の鋳には、鏡を支える台座があるが、多くの場合、これに雲のような彫刻がほどこしてある。これは、朝日が雲間からさし昇ってきたことをあらわしている。また、鏡は参拝する人間を写すもので、自分の魂を拝むことでもある。
　一般参拝は、まず鈴はガランガランと二回鳴らす。鈴の持つ高昔にお祓いの力があり、社殿の中に邪が入るのをシャットアウトするわけだ。鈴を鳴らす時には、自己のケガレをはらっていただくという気持ちで鳴らす。それと同時に、神さまをお呼びする意味もある。夏の風鈴は「チリーン、チリーン」という高音で、邪が入らないようにする。神社や神道の流派によって、様々な参拝の作法がある。普通は二拝、二拍手、祈願、一拝になる。おじぎは相手への信頼をあらわすもので、おしぎした時自分は全くの無防備になる。無防備であることで、神に対する信頼をあらわすわけだ。拍手は神さまへのごあいさつだ。合掌は「鏡印」と呼ばれる手印で、拍手は陰陽の結合調和をあらわす。まず合掌して、合掌した手を水平にして、右手を少しだけ手前に引いて、水平に両手を広げてパンとたたく。その際、左手のひらはやや丸めると、右手と打ち合った時に空気の層ができて、良い音が出る。打つ時はずらし、打ち柊わったら元の合掌に戻して1セットになる。「倭志」倭人伝によれば、三世紀ころの日本人は、目上の人にあいさつをする時に拍手を用いたという。この拍手の礼は、人間同士のあいさつのスタイルとしてはなくなったが、神社で神さまを拝む時の拍手としては残っているわけだ。参拝の姿勢は、日々生かしていただいていることへの感謝だ。まず「神のご開運」を祈る。神はもともと人間よりもはるかに上の存在なのたから、非力な人間が神の開運を祈っても意味があるのだろうか？」
　日本の伝統的な神道思想は、人間は神の子供として生まれたとする“生みの神親”だ。そして、生んだということであれば、人間の根源的な親、大先祖は神ということになる。自分と親、先祖、神は大河のようにつながっていることになる。神の開運を祈るということは、子である人間が、場である神に感謝することであり、大きな親孝行であり、恩返しなのだ。
私たちは一人で生きているわけでなく、天地自然に生かされている存在だ。生かされていることへの感謝と、それに対する“恩返し”の一つが「神の開運」になってくる。
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